地域デザインをめぐって vol.16 “熊本地震”

熊本地震被災地踏査からの考察 3 避難所・仮設住宅

井本 佐保里

 2016年4月14日以降、熊本や大分で地震が続いた。震度7を2度含む、非常に強い揺れが断続的に継続した。直接の犠牲者は50人となった。
 こうした状況に対して、東京で復興デザインを研究している私たちは何ができるのだろうか。
 地元のご迷惑にならない範囲で、被災現場にお伺いして、何が起こったのか、起きているのか、その実態を学ばせていただき、各自の研究的関心に引き寄せて、次に生かすためによく考えよう、ということになった。
 きちんとした調査ができたわけではなく、1,2度現地を歩いて、その後、有志一同で議論をしてリサーチ・クエスチョンを温めた程度にすぎない。しかし、同じように考えている方も少なくないと思われ、一応、ここにまとめておくこととした。

1 熊本地震の全般的考察(澁谷崇)
2 益城町中心部における建物・道路被害等に対する市街地形成の観点からの考察 (萩原拓也)
3 避難所・仮設住宅(井本佐保里)
4 広域における震災(益邑明伸)
5 震災における国と地方自治体(窪田亜矢)

1.はじめに

 本稿では、筆者らが2016年5月6日に実施した現地踏査および文献調査等を踏まえ、熊本地震発生から2016年7月時点までの約3か月間において、避難所および仮設住宅がどのように整備されているのかについて整理を行う。

2.避難所

2.1. 避難所の整備状況

(1)避難所の設置数

 熊本県内の避難所は2016年4月17日の855箇所(避難者数183,882名)(災害対策本部発表)を最大に統廃合が進み、6月6日には152箇所(避難者数7,045名)(災害対策本部発表)、6月20日には120箇所(避難者数6,071名)、7月19日には87箇所(避難者数4,027名)(ともに災害対策本部発表)と減少している。図1および図2に主な被災地域における避難所数の推移を示す。特に熊本市で急激に避難所数・避難者数が減少している一方、南阿蘇村では増加している等、都市部と地方部、あるいは被害の大小による差異が見られることが分かった。


▲図1:主な被災地域における避難所数の推移(参考:災害対策本部)


▲図2:主な被災地域における避難者数の推移(参考:災害対策本部)

(2)福祉避難所の整備状況

 熊本県によれば、県内に福祉避難所は461箇所指定されており、計約7,400人を受け入れることが可能となっている。一方で、実際に活用されている福祉避難所は数が限られており、115箇所(2,401人)(朝日新聞,2016/7/1)に留まっているという。

2.2. 避難所内の設え・運営の工夫

(1)簡易ベッドの設置(段ボール)

 熊本地震後の避難所では、段ボールによる簡易ベッドが設置されている状況が多く見られた。これら簡易ベッドは、全国段ボール工業組合連合会や段ボール製造会社のエス・パックスなどによって提供されており、段ボールメーカー「Jパックス」によって東日本大震災後に考案され、その後、広島土砂災害の際にも提供された。段ボール箱はベッドやソファとして利用できるだけでなく、座った際に視線が隠れる程度の間仕切り壁がついており、プライバシー確保の観点からも支持されている。現在、災害時にベッドを提供する協定を結ぶ活動が開始され、約220市町村、7府県と協定が結ばれている。今後、災害時の避難所での設置が普及していくことになると予想される。

(2)間仕切りの設置

 建築家の坂茂氏によって紙製パイプを組み立て、布を開閉できるようにすることで個室空間をつくるもので、複数の避難所において提供された。避難者の居住スペースに設営される場合や、更衣室や授乳室などよりプライバシーが必要とされるスペースにのみ設置される場合も見られた。 2004年の中越地震以降改変を重ね、東日本大震災時にも1800ユニットが提供されている。

(3)共用スペースの設置

 益城町の町総合体育館では、7月16日に体育館の端やロビーに食事用のテーブルや学習机、ソファなどを設置し、共有スペースが整備された。町総合体育館は地震でアリーナ天井が落下したため、当時は廊下での避難生活を余儀なくされた。改修後、5月22日より避難者の受け入れを開始した。アリーナ内には上述した坂茂氏による紙管の間仕切りユニットが設置されている。今後、益城町内の避難所は同体育館に集約される予定で、居住性を高める試みが進められている。

(4)コミュニティごとの世帯配置

 西原村の山西小学校を利用した避難所では、村の地区ごとに滞在する教室を分けることで顔見知り同士が同室となるように配慮し、避難生活におけるストレスを軽減する工夫が行われている。また、新興住宅地の住民は体育館が割り当てられているという。

2.3. 新たな避難所の形態

 熊本地震後における特徴的な避難(所)の形態として、テント、トレーラーハウス、車中泊を挙げることができる。

(1)テントの設置(益城町)

 益城町総合体育館のグラウンドでは、アルピニストの野口健氏が提供したテントが4月24日に設置された。同規模のテント村は国内初の試みとなる。当初は不安の声も聞かれたものの、最大時には、156世帯、571名がテントを利用し、特に子どものいる世帯等に人気であった。しかし、徐々に気温が高まる中、また梅雨になり浸水の危険性が高まることが懸念される中、益城町によって5月31日にテント村の閉村が決定された。

 現地を訪れた際、テントの横に自家用車をつけ、テントと車を行き来しながら生活している様子がうかがえた。

 野口氏は自身のホームページで、テントによる避難スペースは一般の避難所に比べ面積が広くとられていること、家族だけで過ごせるプライバシーな空間が被災者には求められていること、テント設置中に緊急搬送された避難者はおらず、ストレスフリーな環境がその一因として挙げられる、と述べている。

(2)トレーラーハウスの設置(益城町)

 益城町の産業展示場「グランメッセ熊本」には福祉避難所としてトレーラーハウスが設置されている。福祉避難所としてトレーラーハウスを活用するのは全国初の試みとなる。益城町は、福祉避難所の不足を解決するためにトレーラハウスに着目し、日本RV輸入協会から有料でレンタルした。また日本トレーラーハウス協会から3台の無償貸与も受けた。

 2016年6月19日時点で19台が設置され、13世帯が避難している。今後設置数を増やすことが計画されているが、8月末で終了となる。

(3)車中泊

 車中泊は、中越地震において車中泊による関連死の発生によって注目され、熊本地震においてもエコノミー症候群の発生が大きな課題となっている。車中泊の正確な数を把握することはできないが、益城町によれば、2016年5月11日時点で7箇所の避難所に約900人が車中泊がしていたという。このうち約300人がグランメッセ熊本に避難しているとしている(jiji.com、2016.05.11)。一方、日本財団「益城町内の避難所および避難世帯の状況調査分析結果の調査報告」(5月16日)によれば、調査対象とした町内の避難所利用者のうち回答者の12%が就寝場所として車を利用していたという。特に家族人数の多い世帯が車中泊を選択している傾向も見られるとのことで、特に子どものいる世帯が周囲に迷惑をかけることなどを気にして選択している状況も伺える。

 車中泊先としては、支援物資の届く避難所駐車場が優先的に選択されていると考えられるが、コンビニや空き地、公園等に駐車する事例も見られる。一方、イオンは、店の安全が確認された店舗の駐車場を被災者に提供する対応をとった。 車中泊を選択する要因として、屋内が怖い、避難所のストレス、子育て、ペット同伴、などが挙げられる(毎日新聞、2016.4.25)。

3.仮設住宅の整備状況

3.1. 応急仮設住宅の整備状況

(1)応急仮設住宅の設置数

 2016年8月20日時点で、104か所4,157戸の仮設住宅の整備が計画されており、72か所、3,237戸の工事が完了している(熊本県)。最も多くの仮設住宅が整備されるのは益城町で、17箇所1,556戸となっており、益城町の全世帯数の1割以上にあたる。

(2)応急仮設住宅の立地と応募状況(益城町の事例)

 益城町内に整備される仮設住宅団地の位置を図3に示す。多くの仮設住宅団地が既存の市街地のフリンジ部に整備されることが分かる。2016年5月に現地を訪れた際には、既に町中心部では八百屋やコンビニなどが再開されており(写真1)、日常の一部が戻りつつある状況に感じられた。仮設住宅がこれら元の地域から離れずに整備されていることで、被災者もこれまでの生活を大きく変えずに避難生活を送ることが可能だと考える。一方、仮設住宅戸数の不足から整備が検討されたテクノ仮設団地は、唯一市街地から距離の離れた空港近くに整備されている。ここには益城町仮設住宅の中で最大の規模である561戸が整備された。しかしながら第一次募集では、抽選結果後100世帯からの辞退が出る状況が生じた。理由として、元の居住地から離れている点が多く挙げられている。その後第二次募集では、テクノ団地を第一希望とする世帯が増加し、全戸への入居が決定した。この背景には、第一次募集での辞退者の状況を受け、産交バスが新たにバスを2路線新設したり、県が大手スーパーイオンに働きかけ仮設店舗を団地内に整備するなど、利便性の向上を図ったことが少なからず影響していると考えられる。


▲図3:益城町内仮設住宅の立地(益城町HPを基に筆者作成)


▲写真1:益城町中心部の八百屋(2016年5月6日)

(3)仮設住宅の平面計画

 仮設住宅の設計は、プレハブ建築協会と県優良住宅協会(熊本市)が担う。プレハブ建築協会によれば、7月15日時点で、県全体で建設された3,678戸のうち3,116戸をプレハブ建設協会が整備しており(プレハブ建築協会HP)、仮設住宅の大半が同協会によって整備されている。

 整備される仮設住宅は、これまでの仮設住宅と同様に3タイプの間取りが用意される; 6坪(20㎡)、9坪(30㎡)、12坪(40㎡)。

 益城町では、既に整備が進められている仮設住宅に加え、町の中心部に障碍者向けのバリアフリーに配慮した仮設住宅整備(4~8戸)の検討が進められている。車いす等利用者に配慮したトイレや浴室の計画が一般の仮設住宅との違いになってきそうだ。

3.2. みなし仮設住宅の状況

(1)みなし仮設住宅の実態

 仮設住宅の建設に加え、みなし仮設住宅の確保も進められている。当初は、賃貸物件の多くも被災していることや、間取りのミスマッチなどが原因で、必ずしもみなし仮設への入居が進んでいるとは言えない状況にあった。

 こうした状況を受け、「補修型みなし仮設」として、みなし仮設住宅として提供することを前提に、被災した民間賃貸物件の補修に対して補助を行う枠組みが整備された。

(2)みなし仮設住宅の役割

 みなし仮設住宅は阪神淡路大震災後に整備された制度であり、東日本大震災においても活用されている。東日本大震災におけるみなし仮設住宅をめぐる状況を見てみると、被災地周辺での賃貸物件の不足等から、賃貸物件が多く、被災の小さな都市部に特に若年層の被災者が移住する契機ともなっている状況がみられる。熊本地震後のみなし仮設の実態についての実態は明らかになっていないが、みなし仮設が地震後どのような役割を果たしているのかは、詳細に検証をする必要があるだろう。

井本佐保里(いもと・さおり)
2013年東京大学工学系研究科博士後期課程修了。2014年より復興デザイン研究体助教。
専門は建築計画。特に災害後の生活再建、スラムにおける子ども施設に関連する研究・実践に取り組む。