地域デザインをめぐって vol.05 “合同研究室会議”

京都大学景観研(山口敬太さん)編

窪田亜矢

2014年11月16日〜17日にかけて、京都大学社会基盤工学専攻景観設計学分野の山口敬太さん、学生の皆様と一緒に、合同研究室会議を宮島で開催しました。
全員が発表して一つずつ議論するというやり方は長い時間を要しますが、民家を一棟丸ごと借りて宿にできた御蔭で実現しました。特に景観研の修士二年生の皆さんの発表には、何度となく試行錯誤を繰返し、粘り強く考え続けてきた成果が結実していることを感じ、非常に勇気づけられると共に背筋が伸びる想いがしました。そのような姿勢を見せていただいたことに心から感謝します。

<参加メンバー>
京都大学景観研 山口敬太さん、大川君、八尾君、湯川君、水牧君
太田+柄澤+窪田+柴田+益邑+李

三つの論点

土木工学と都市工学の研究室ではありますが、人々が暮らしている地域の維持や創出に貢献する技術開発研究を志向している点は共有しており、全く違和感なく議論ができました。いくつもの論点がありましたが、以下の三点は私にとって特に興味深いものでした。

歴史研究

歴史研究を主体的に行う者と、歴史研究の成果から学んで未来に活かす者という二つの立場があり得る(私たちの分野では、前者は基本的に後者であるが、後者は必ずしも前者であるとは限らない)。

歴史研究を主体的に行う者は、想像力を駆使して、対象としている歴史の時点に没頭することが重要なのだろうと思う。そのような態度があれば、細部まで知り尽くせる(たとえば赤浜での神原君)。それによって「発見」が可能になる。その「発見」が、たとえば研究の仮説とかストーリーとかコアになるもの、と言われるものなのだろう。

歴史研究によって明らかになったことから、直接的に今何をすべきかがわかるわけではない。しかし間接的に学べることは無限に広がっている。しかもその無限の可能性は、活かそうとする者の能力に完全に開かれている。その魅力は計り知れないと改めて思った。

現場との関わり方

地域をデザインするためには、今、何が起こっているのか、理解する必要がある。現状に至っている背景は何なのか、現状が生み出している価値は何なのか、また将来は一体どうあるのか。現場の出来事をじっと観察し、とりあえずの調査を重ねて、地域の方々と議論をしたり一緒に活動してみると、膨大な事象の関係性がうっすら構造化できる気がしてくる。そのような構造化を支持してくれそうな既往の知見を探し出してカスタマイズしていくうちに、新たな知見としての概念にたどり着くことがある。

▲湯川君の発表。現場との関わりから経験価値という概念にたどり着いた。

もう一つ、まずは提案から始めるアプローチもある。特に、防災や減災という主題は、外部の専門家等が問題意識をもって現場をみることで、改善の提案が可能となるという特徴を持つといえるだろう。提案が実現するためには、現場に合わせた提案内容の柔軟な変更もしなければならないが、なかなか難しい。

だから地域デザインを構想するときには、これら二つのアプローチのどちらも意識的に併用し補完することが重要なのだろう。と振り返りながら、研究発表を聴いて地域デザインの実践を考えていたということは、理論化と実践のつながりを意味すると思った。

復興、生業、文化

「復興がテーマだと生業を考えるんですね」という主旨のご指摘をいただいたのが新鮮だった。確かに研究室には生業に関連することを考えている人が多い。

生業とは「生活を営むための業」というのが大まかな定義かも知れないが、仕事・産業・労働等との意味の差異、外貨を稼ぐことなのか生き甲斐なのか、代替不可能な場所性や共同体にとって生業の意味とは何か、生業を可能にする広域における関係性とは何か等、精度高く考えるべきことは多い。

また二つの研究室に特に共通する重要なキーワード「文化」について、もう少し全員で議論したら良かった。営みの結果としてではなく、計画の対象として「文化」を扱うことの危惧を十二分に認識したうえで生業論と統合すれば、地域デザインの枠組みになるのではないだろうか。次の課題としておこう。


▲6時間を超える議論の後に集合写真を、ぱちり。