空間計画設計論(2014年度)

1月23日発表分へのコメント

最終回になり、時間配分が悪くて申し訳なかったのですが、全員の協力で何とか終わりました。
誰もが知っている場所や問題にチャレンジする人と、自分の部分でもある地域を対象にして考える人と(もちろん両者がシンクロする人も)幅があったこと、それを皆で共有できたことで、講義の意義がありました。
実態を把握するところまでは丁寧にできても提案の部分につながっていないことが多かったように感じます。そのため発表も前半部分に熱が入りがちでした。調査や実態認識の重要性は明白ですが、具体的な提案が目的であるという今回の位置づけを習慣化してほしいと思います。そうでないと提案は、いつまでも実現には届かないもので終わってしまいます。
今回は講義という形でしたが、これからの皆さんの研究にこうした姿勢を活かしてもらいたいと思います。

・小坂
高田馬場を学生を中心とした昭和のランドスケープだけでなく、近年見返され始めた明治・大正のランドスケープである染め物産業が神田川にあることを活かしてリバーウォークを造ろうという提案。
区間を分けて活動もふまえた具体的提案は、空間設計になっているが、前半の昭和等のイメージが結びついていないか。

・山方
福岡の田川郡福智町を、故郷ならではの語り口で、交流施設があってもそれを活かし切れていない等、実態をよく理解していることがわかる。小さな単位でのまとまりをつくることと、交通による他地域とのつながりの提案は納得がいく。

・田崎
伊勢佐木町が、商店街として衰退化しつつあることを、みなとみらいと比較して示したのちに、馬車道と伊勢佐木通りを連結する提案。連結は良いが歩道橋か?これらを結ぶということの困難さはこれまでの横浜都市デザインの取り組みでもある。

・中谷
釜ヶ崎を対象にして生活実態が数値的にみても非常に厳しいことを、次に悪い地域の数字と比較してみせた。ゼロにすることではなく機会を共有しようという点を明確にできた。多くの実際の取り組みを今一度みてみてほしい。地に足のついたチャレンジングな提案だった。

・八百山
日本橋あたりの首都高の景観とは何ぞや、という点を改めて整理。川沿い、首都の顔、歴史の積層等、多くの意見があるが、費用の面が問題ならそこを調べる必要があるだろう。縦方向のつながりもわからないわけではないが、どこの場所なら、という突っ込んだリサーチが要る。

・岩瀬
「地域」から地元、愛着という言葉に展開し、自分の小学校区である西尾市寺津を対象にしたところがまず非常に良い。隣の碧南市大浜地区の歩いて暮らせるまちづくりを参照にするのも良い。しかし提案に、きめ細やかな愛着が結びついていないのでは、という問いかけは本質的。

・竹村
常盤平団地の魅力をスターハウス等、一方、若い人も含む孤独死を課題として挙げたが、そこに深度のある解釈がないので、どこかで聴いたことのある提案になってしまい、それは空間を動かす迫力に欠けてしまう。

・増田
草加市の松原団地を対象にして、猫がいることからの猫カフェという提案。猫が資源になるという発想が(少なくとも私にとっては)新しい。猫は好き嫌いがはっきりする点への配慮は要るが、一つ位あっても面白いと思わせた。

・松田
中野~新井薬師を挙げて、早稲田通りの見えない壁を越えることを課題化。ブロードウェイは、実は排他的ではないかという質問は経験をふまえた実感で良かったが、そうした排他性は魅力でもある。そういう矛盾をはらむ論点を解いてほしい。

・長澤
田端銀座を丁寧にみつつ、商店街の一体感や分断感の解消策を提案。地元のコミュニティの強みを活かして一丸となった対応ができるという確信は、提案の深度を深めることで強化できる。

・青木
(旧)山古志村を対象にして、たとえば錦鯉を活かす為には観光客にわかりやすい形で飼育する必要性を主張。そもそも観光でどれぐらいの産業化をはかるのか、という点の整理が要る。

・久松
表参道を対象に、250mおきに横断歩道があるといった具体的な空間分析をふまえて、ケヤキ並木制限(ビル高さ)とブリッジ(表参道に平行)による新たな視点場の提供を提案。前者は地区計画で実現していますね。後者は、歩道橋をなくしていこうという風潮の中で新鮮だが、ビルの二階などにうまく視点場をつくることもできるのでは。

・小林喬
衣笠における小学校区の統合による地域認識の変容や衰退を課題化したところは重要。「へ」いこうになった小学校で「そ」ととうちとの交錯点をつくる、という「へそ」の提案。普遍的な解決のコンセプトになっている。

・井上
鬼怒川の一番の資源は鬼怒川を中心に楽しめる空間であることが望ましいはず、という点から議論をはじめるところが、よく考えられていた。廃墟ホテルや車窓を丁寧にみたのはとても良いが、では再生とは何かというビジョンを明確にできるとなお良かった。

・山村
広尾のディティール(見通しの悪い道路とかアップダウンの多さ)をうまく解消するために、塀や柵の建て方等や見回りの強化の提案。こうしたあたりは住民の方が課題を強く認識していないときはなかなか解けないのだろう。

・小林里
赤坂丹後町からの流れをまずは明らかにして、高齢化、災害リスクの上昇、耐震強度の不足等をのべて、オープン・スペースの設置義務づけとvertical zoningを提案。二つの提案の方向性は、都市計画設計として本質的。赤坂丹後町ならではのところまで踏み込めるとなお良い。

窪田亜矢