#62

長い空の旅から降り立った朝。賑やかな都会に向かう鉄道からの静かな車窓は、興奮と不安と眠気の中で、第一印象としてぼんやりと記憶に残る。

「黄金の土地」と名付けられた空港と都心のあいだ。自分の知る〈駅前〉とは全く異なる、駅前。タクシーの運転手が駅への道を知らないのも、無理はない。
見向きもされないこの風景が不思議と心にとまり、2年間追いかけてきた。
圧倒的な都市拡大、交通路の変化、独特の法制度、そして人々の土着的な営み―
学習を通じて文字列が図から意味になるように、風景も絵から現象になる。
それは、ここで積み重ねられてきた、かけがえのないシステムの解読である。
そして、そうした解読から、机上の空論に留まらない、次へのヒントが見えてくるものと信じている。

2019.3.1 T.Ito