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海洋博公園からの展望
年間約323万人が訪れ沖縄を代表する観光施設である「沖縄美ら海水族館」へのアプローチとなる海洋博公園 *の大階段からは、沖縄らしい青い海と空の中に、ちょこんと尖った伊江島タッチュー(城山:ぐすくやま)をのぞむことができる。観光ガイドブックを開くと、伊江島はレクリエーション色の濃い、のどかな島のような印象だが、第二次世界大戦の激戦地となった「沖縄戦の縮図」ともいわれる島である。戦後も土地の強制接収に対して島人が命懸けで闘い続けた苦難の歴史を経て今日なお、島の35%は米軍の演習場が占めておりオスプレイ の訓練も行われている。伊江島タッチューはそんな伊江島の象徴であり、島人の信仰の対象である。沖縄の多くの小中学生は校外学習で伊江島を訪れ戦争について学ぶ。

戦後生まれ内地育ちの自分は、ここに初めて立った時には、軸線を意識した強烈な設計意図を感じ、絶景に息をのんだ。しかし、沖縄で子どもたちと暮らし、沖縄について知るほどに、この風景を前にすると、地域が平穏な暮らしを手に入れること、そして守っていくことがいかに難しく尊いことであるかを噛みしめ、息が詰まるようになった。地域の文脈をきちんと知らぬまま通り過ぎてしまうのも、伝えずに表面だけを無邪気に繕い続けるのも苦しい。観光は、地域の光を観る・観せるという意味を本来もっているが、それは時間的・空間的広がりの中で光源と影をもあわせて観る・観せることで深みを増してゆくと思うのだ。ここを訪れるひとりでも多くの人に、この美しい大海原に浮かぶ小さな島の苦難の歴史と現在に思いを馳せ、責任をもって「私たち」の未来を展望してもらいたい。

2015.11.24 C.Ishiyama

*海洋博公園(沖縄県国頭郡本部町):沖縄県の本土復帰を記念して1975年に開催された沖縄国際海洋博覧会の跡地に翌76年設置された公園。テーマは「太陽と花と海」。正式名称は国営沖縄記念公園海洋博覧会地区、所管は内閣府沖縄総合事務局、都市計画決定面積約77.2ha(開園面積約71.8ha)、入園者数約435万人(2014年度)