#16

「もうちょっと露出時間を長くして建物のディテールを飛ばしてみたら?」

この写真を暗室で現像しているときに、写真の先生がこう言ったのだ。これはコロンビア大学キャンパス拡張計画によっておそらく取り壊される界隈の風景を写した写真である。作品としてはそうしたほうがいいだろう。でも、この剥がれかかった壁のサインこそが、もうすぐ壊される運命にあるこの建物とともに、地域の人々にとっての日常的な風景だったのだ。せめてもの記録として私は作品としての完成度とのギリギリのバランスをとりながらも、先生の忠告を無視したのだ。

2015.4.24 B.Morokuma